『「タレント」の時代 世界で勝ち続ける企業の人材戦略論』酒井崇男

 学生の頃、電気製品や半導体は世界で日本が一番すごい、と聞いていた。なるほどそうなのだなと素直に思っていて、だからこそ日本はこれだけ豊かな国なのだと納得していた。

 現在、私が愛用している電気製品はアップル社のものだ。私の周りを見ても、アップル製品を愛用している人が多い。日本が一番すごい、と言われていた分野だったはずなのに、どうして日本製品は選ばれなくなったのか。ずっとそれが疑問だった。

 酒井崇男さんの『「タレント」の時代 世界で勝ち続ける企業の人材戦略論』は、私がぼんやりと抱いていた疑問に答えてくれる本だった。

 

 本書はなぜ日本の商品が世界で売られなくなったのか、その理由のコアとなる「タレント」とはどのような人物を指すのか、その「タレント」を生かす仕組みをどのように作るのか、が書かれている。トヨタの人材戦略を中心に据えて書かれているので、「またトヨタの話かよ」と少し辟易した。けれど、世界で認められる日本製品を開発するには人材を生かすことが重要なのだと、わかりやすく書いてあって勉強になった。

 私は、これからの社会ではAIが活躍する場が多くなるだろう、と考えている。AIによって職を失う人が多数出る、と書いている本だって売られている。もしそういう時代に突入した場合、どのような人が職を失わず社会から必要されるのか。そのキーワードの一つが本書の「タレント」なのだと思う。

 

 本書はものづくりに携わる企業向けの人材戦略論だ。だから全ての業種に「タレント」が必要だとは思わない。けれど、本書を読むことでこれからの社会、経済を考える一つのキッカケになると思う。