天宮さくらの趣味棚日常

天宮さくらの好きなもの、知ったことを紹介中

『楽園のカンヴァス』原田マハ

 私の実家は岡山にある。岡山を代表する作家さん、といえば人によって回答は違うと思うけれど、私は原田マハさんをあげたい。とはいうものの、実はあまり彼女の小説を読んでいない。それでも彼女の名前をあげるのは、やっぱり『楽園のカンヴァス』が好きだからだ。

『楽園のカンヴァス』を手に取ったのは、平成二十六年。夏の文庫フェアのときに、文庫化したのを知った。それまでにも新聞や広告で面白いと前評判を聞いていたので、機会さえあれば読んでみようと思っていた。夏の文庫フェアというのは私にとっては新しい本に出会えるいい機会なので、購入し読んでみることにしたのだ。

 

 本書はアンリ・ルソーの名作「夢」に酷似した絵の真贋判定をめぐる物語だ。アートミステリー小説を読むのがこの本が初めてで、こういう形でのミステリー小説が存在するのかと衝撃を受けた。けれどそれ以上に衝撃だったのは、アンリ・ルソーという画家だった。

 私の母は芸術作品をこよなく愛していて、子供の頃から美術館によく連れて行ってもらった。母の芸術を愛している心を、きっと引き継いだのだろう。大人になってからも美術関係の本を読んだり美術館に足を運んだりしている。なんとなく芸術って好きだなと思っていた中で、本で見たアンリ・ルソーの絵は珍妙だった。「これって、不思議」というのが私の感想だった。その絵にはどんな歴史があってどんな人が描いていて、どんな魅力があるかなんて知ろうともしなかった。

 そういう私を『楽園のカンヴァス』は変えてしまった。本書は「夢」に酷似した絵の真贋判定の物語だ。本物か偽物か。そのことを解き明かすのが面白味なのだろう。けれど私はその点よりも、アンリ・ルソーという画家の歩んだ道に興味を抱いてしまった。

 

 本書を読み終えたあと、アンリ・ルソーに関する本を読んだ。未だ現物を見たことはないが、大塚国際美術館に飾られている「戦争」を見て「不思議。だけど好き」と思った。いつか本物をこの目で見てみたい。そういう気持ちを教えてくれた『楽園のカンヴァス』を、私は大切に本棚に置いている。

 

楽園のカンヴァス (新潮文庫)

楽園のカンヴァス (新潮文庫)