天宮さくらという人間

 私が文筆家というものに憧れたのは、中学二年生のとき。その日は学校が休みで、勉強する気にもなれなくて、なんとなくテレビを見ていたのを覚えている。見ていた番組はよく覚えている。スタジオジブリ作品の『耳をすませば』だ。

 そのとき私は、ちょっと悩んでいた。

 「将来の夢はなんですか?」

 学校の進路希望の用紙を手渡されて、とりあえず高校に進学はしたいなとは思っていたけれど、その先がなんにもなかったからだ。

 

 どうしようか。

 小学生のときの夢は、魔法使いになることだった。魔法使いも悪い魔法使いじゃなくて、いい魔法使いになりたかった。困っている人を見つけたら、魔法でぱぱっとお悩み解決! そして悪いやつには魔法でおしおき! そういう魔法使いになりたかった。

 けれど、自分は魔法使いにはなれないのだと本当はわかっていた。だって、現実に魔法使いという職業の人はいなかったから。

 ついでに言えば、家から出て働く自分、というものが想像できなかった。他人とお話しするのが苦手だったし、知らない人と会うのはストレスだった。

 できれば引きこもって仕事して生きていきたい。

 小学生のときから社交性ゼロな子供だったのである。

 

 進路希望、どうしようか…………と頭の片隅で悩みながらテレビを見ていると、主人公の女の子が驚きの発言をした。

「小説家になりたいの」

 その発言を聞いた瞬間、私の頭の中にびびびびーっと電気が走った!

 小説家! これだ!

 家に引きこもって一人で夢を文章に託して仕事をする。私の憧れがぎゅうっと詰まった職業を、見つけた瞬間だった。

 

 けれど、現実にあったのはナマケモノな私自身。

 小説家になりたい! と強く願ったくせに、文章書くのが面倒臭いと怠け続け、けれど小説を読むのは大好きでダラダラと読むばかり。気がつけば仕事をして日々の生活のやりくりに神経を張り詰める毎日をおくっていた。

 気がつけば、30を超えてしまった。

 けれど、私の人生、いろいろあって、こうやって心穏やかに毎日過ごせるようになったのは、ここ二〜三年なのだ。日々の生活に追い立てられることもないし、将来に恐怖を抱くこともない。欲しかった愛情がやっとのことで手に入ったし、ゆっくりと昔の感情を思い出すこともできる。

 

 夢を叶えるのは、いまじゃないか。

 

 その事実に、ようやく気づいた。

 忘れていたわけではなかったけれど、でもずっと怠け続けていた。いま以上に物語を紡ぐことを恐れなくていいタイミングって、きっと早々ないに違いない。

 けれど、ナマケ心はちょっとでも面倒だとか面倒臭いに触れると、ナマケてしまう。

 そこで、ブログを開始しよう! と思い立ったのだ。

 

 中学生のときに見た、あの『耳をすませば』の女の子よりはだいぶ、年をとってしまったけれど、夢を叶えるには遅すぎることなんてない! という気楽なキャッチフレーズを聞いたことがある。

 そのフレーズを信じて。

 ナマケモノはブログを始めることにした。